台湾の猿が吐き出したコーヒー豆
NHKのニュースでやっていた。なんでもコーヒー園に入り込んだ猿が、実を食べたあと種を吐き出したのか、排泄したのかはよく見ていなかったので不明だが、この種を焙煎してコーヒーを飲んだところ、とてもいい味になったという。
そこでこんな話しを思い出した。阿川弘之と向田邦子さんが『食味風々録』での対談集の中で、向田さんが言っていた。
ひじきは食べてもほとんど消化されずに、チョット膨らんだ形で体外へ出てきます。それを集めて、洗ってもう一度煮たのが『ひじきの二度めし』、本当かどうか知りませんけれど、最高に美味しいですって。昔、海辺て暮らしている貧しい人たちにとって、ひじきは大切な食べ物だったんでしょう。ただで入るし、おなかは十分くちくなるし、しかも二度使えて、二度目の方が味がいいって言うんですから。
もう一つ「リスの糞」という話がある。蘭領ニューギニアのある港に停泊中、土地の官史を船に招いて賑やかな夕食会になった。食後、貨物船の事務長が、取って置きの非常にうまいコーヒーをみんなに振舞ってくれた。船長、事務長、機関長、招かれた地方官、4人ともオランダ人、日本の同行者は、いったいこのコーヒーはなんだと聞くと、セレベスの高地に栽培されているアラビカ種というコーヒー豆、ただし、それも一度、リスの体内を通った特殊な種類であると説明される。
地味、気候、コーヒーの栽培に最高のセレベス島高原地帯は、リスのたくさん棲んでいる地域でもあって、コーヒーの花のしぼみかけを、この動物が好む。花がしおれるころ、コーヒーの実はすでに結実しているのだが、花だけを取り出すことがリスにはできず、両方飲み込んでしまう。花はリスの腹の中で消化されるけれど、実のほうは消化されないまま糞となって出てくるから、花が終わって、実の季節、この地方を歩くと、細かい数珠のようなリスの糞が当たり一面に転がっている。
土地の人はそれを拾い集めて、洗って乾かしたものを品質蘭領東印度で最高のコーヒーとされており、今夜出したのもそれ、総監が毎年オランダ女王に献上する同じ品種「リスの糞」、体内を通過するあいだに何かが変質して、こうした良い味になるであろう。
草や木の種が鳥の体内を通ると、どういう訳か、根付きがいい。昔の人は、山火事があると、種を鳥にまいてやって、山の植林の手助けにしたと聞いたことがある。自然の共生というのだろうか。
我が家の庭にも、知らないうちにシュロの木が3本生えてきた。おそらくヒヨドリが運んできたのでろう。この木はゾロゾロしているから切ってしまった。
幹は葉鞘である繊維(いわゆるシュロ毛)によって覆われている。この繊維は分解しにくく、シュロ縄などに利用されてきた。水に浸かってもほとんど腐らないので、石油製品のない時代においては非常に貴重な資材であった。シュロ縄は船を係留するロープとして、庭園の竹垣や袖垣などを結ぶひも、建築用の縄などに利用され、繊維を束ねてブラシとして使用したりした。葉を葉柄に付けたまま裂いて編みなおし、はえ叩きにしたり、シュロ帚を作ったりしたものだ。
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