選挙カーの快感
選挙の運動員をしたことがあった。
小さな町で人口が2万人を切っていた。そこの選挙と言えば、当選票数なんて平均で200票もあれば十分である。成人が1万人で、投票率が40%なら、有効投票数は4000票だ。20人立候補すれば一人200票。最下位当選なんかは120票でも当選できる。
こんな選挙運動というと、町内会の寄り合い所帯同様である。だから選挙事務所に来る人を見れば
大方投票数が読めてしまう。
以前勤めていた会社の社長が、戦争中に代用教員をしていた。そんなころの教え子が、いまや戸主となり、先生先生と呼ばれて、舞い上がっていた。それでいつしか本当の先生になろうと、立候補を決め込んだ。代用教員だよ。要するに戦争にいけない体であったから、残った中で代用を求めただけだ。
選挙となれば七つ道具が要る。
立候補届けが受理されると選挙管理委員会から次の物が交付されます。
1.選挙事務所表札
2.街頭演説用標旗
3.自動車及び船舶用表示旗
4.乗車及び乗船用腕章
5.街頭演説用腕章
6.拡声器用表示物
7.個人演説会看板用表示物
これが選挙の七つ道具と呼ばれる物で、これらを携行、あるいは表示しないと選挙事務所の看板表示や街頭演説ができない規則になっています。
運動員は当然、社員が駆り出される。町道が細いから、軽四輪の後ろに箱を載せて、4人ほど乗ってマイク片手に町内をクルクル回る。小さな町だから、対立候補が横にいるわ、前にいるわ、後ろから追いかけてくるわと、選挙カーが渋滞を起すぐらいだった。
マイクの握って言う事は、大方いつの時代も変わりない、名前の連呼である。私なんか、
「おや、お母さ~ん、ワザワザ手を振っての応援ありがとうございま~す」
「家の中から手を振っていただいて、嬉しいね、がんばります」
「車の中から、子供さんまで手を振って、感謝します」
と、誰もいない畑に向かって、嘘八百並べ立てたものだ。あるとき、うっかり自分の名前を連呼してしまった。車の上から手を振る快感に酔い、快い選挙運動員は事務所に帰ってくると、
「誰だ~~ッ、自分の名前を言ったやつは」
と、選挙参謀から叱られた。
今騒がしく選挙運動をしているが、ほとんどの運動員は、立候補者のマニフェストなんて、知らないだろう。それと議員時代の功績も知らないだろうし、居眠り議員であることも知らないだろう。
町内会のシガラミ、集落の付き合いで、仕方なく応援しているのがほとんどだ。
当選すれば、あれほどペコペコしていた候補者は、先生になりきって、税金の無駄使いに走りまくっている。
わが社の先生はウソが多くて、私が社員の時分はずいぶん悩まされた。新人立候補のころはいい得票数であったが、段々と地金がでてきてしまった。町民は騙せない。3期目にはギリギリ当選したが、4期目は議員年金(3期12年)がついたのを確認して、立候補しなかった。そして私
が退職して直ぐに、倒産してしまった。このバカな先生は、先祖から受け継いだ大きな田地田畑、600坪の自宅 も取られたという。いま議員年金で長屋暮らしをしていると聞いた。こんな奴はまたどこかで、町内会長から先生に這い上がってくるかもしれない。
シガラミで先生を選んではいけない。よく見て選んでちょうよ。夕張にされんように。
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