嗚呼とうとう、氏子総代になってまった
いよいよ決戦の時が来た。10時から「新高山登れ」である。少し早めに社務所に行き、暖房を入れる。机を並べて座布団を敷く。何でも少し早めに行き、会場の雰囲気に体を慣らしておくといい。何でもというと、なにがといわれるかもしれんが、結婚式の司会とか、公演会の講師をするときに、早めに会場に入っておくと、気が休まるのである。ドキドキが収まったころに始められるからだ。言っとくけど、結婚式の司会は5回と公演会の講師は1回やったでね。
この町内は、たった32軒しかない。そのうち60歳以上が52人ぐらいいる。ワシなんか65歳やでェ、相撲で言うなら序の口だ。今年は真清田神社の祭り担当の、大年行司の当番が回ってきた。
仕事はたいしたことなく、もう引き継ぎの次期に来ているが、土壇場になって、この町内にある神社の氏子総代が止めると言い出した。家族から止めさせて欲しいと申し出があった。どうも『アサッテの人』になりかけているという。
私が見ていても、急に悪化してきた感じだ。申し出を受けた町会長が、アンタが総会を引っ張ってくれと命令されてしまった。ワシね序の口だでねッ、でも昔の町内のガキのころからのボスに命令されると、文句が言えないのよ。
仕方無しに引き受けた時に、うすうす総代をワシに押し付ける雰囲気があった。
総会には町内の半分ぐらい参加してきた。今回初めて総会をするが、不参加した時は、総会の決議に同意したと見なしますという、脅しを回覧板で回した。欠席裁判で、出て行かないと総代にされると思った人もあったと思う。それでいいのじゃ!
こういう時に下書きになる、式次第を作っておいて、配布した。これがないと支離滅裂になる。会議は紛糾するだろう。これを配布して、特に決議を取る時には、できるだけ二者択一方式を取った。文句を言わせないようにした。
今回はだれもがやりたくないから、あまり発言をしないだろうと予想をしていた。案の定、発言を控えめにしているから、うるさ型に指名するように発言を求めた。
最後に「では、どなたか総代をしようという方はいませんか」と言うとみんな私と顔を合わせないように下を向く。そしらぬ顔で、隣の人と会話をする。
「アンタが受けたらどうか、適任だと思うが」とうるさ型が言ったのをキッカケに、一斉に「そうだそうだ」とうなずく。この機を逃したら、今度は私に番が回ってくるとばかりに、ウンウンとうなずく。
私はチョットトイレに立った。少し意地悪をしたくなった。この変な間合いが、みんなにどんな心理が働くかを楽しみたかった。友人の3人には、なり手がなかったら、最後はワシがするが、その時は応援をよろしくと頼んでいた。
最後にもう一度なり手がないのを確認して、私が2年限定で引き受けることを宣言すると、満を持して拍手をしてくる。
クッソ~ッ!そんで言ってやったわさァ、「ワシはね『安部だでねッ』、なんぞごと物議を起されたら、チャッチャと総辞職をするでねッ」と。「これから先輩の顔を伺いながらやっていくのは、気苦労だ。『ワシは安部だでね』そんでもいいかね」というが、なんでもいいやってくれとうなずく。
この小さな神社は、土地持ちでね、いま1千万ぐらい金を持っている。ワシよりぎょうさん持っている。だからワシを金から離さないと危険だから、会計を別の人に任せた。
「わしは総代じゃ」と叫んだ。だれかしなければかたが付かんから、でも少しぐらい町内の役にたつことをする、年になったと思う。
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