西行はゾンビをつくったことがある
宮元啓一著の『日本奇僧伝』にこんな話が載っている。
西行が中納言師仲興卿との会話である。
ーー西行がゾンビつくりに失敗した。人の骨を集めて何とかつくってみた。ところが姿だけは何とか人のように出来上がったが、色は悪く、また、心というものがまったくなかった。声は出るのであるが、弦管(楽器)のような音のようにであった。心があってこそ、人の声はなんとかかんとか駆使できるのである。
この出来損ないの人を高野山の奥の、人の通らないところに捨て置いてきた。人が見たら化け物といって恐れおののくことであろう。
つくり方に疑問を感じて、中納言師仲興卿に打ち明けた。中納言師仲興卿は
「いったいどんなつくり方をされたのか」
「そのことでござる。まず広野に出て、だれにも見られないところで死人の骨を拾い集め、これを頭から手足というように、順序を違えず並べ、砒霜(ひそう)という薬を骨に塗り、イチゴとハコベの葉をこれの揉み合わせ、糸と藤の繊維などで骨をつなぎ、水で繰り返し洗い、髪の毛の生えるべき頭部には、サイカチの葉とムクゲの葉を焼いて灰にしたものをこすりつけ申した。それから、土の上に畳表を敷き、かの骨をうつぶせに置き、風が通らないようにキッチリと包み込み、二七、十四日そのままにしておいた後、そのところに行き、沈(じん)と香を焚いて、反魂(はんごん)の秘術を行った次第です」
そんなことしなくても、今はもう遺伝子操作で動物が出来上がってきている。その内フセインのような独裁者が、軍隊を再生するだろう。
間違ってもつくろうとしてはいかんでェ。
以上で製造法の伝授は終わりである。
つくり方を教えよう。実は香は焚かぬのでござる。香は魔縁を退けて聖衆(しょうじゅ)を集める力があるからじゃ。焼くべきものは、沈と乳とでござろう。また、反魂の秘術を行う人も、七日の間、物を口にしてはならぬのじゃ。これ一つでも手順を間違えてはなりませんぞ。
「大筋ではだいたいそのようなところでしょうな。しかし、反魂の術が未熟だったんでしょうな。私はひょんなことから、四条の大納言の流儀を受けましたな、人をつくったことがござる。その人の名を明かすと、つくった人もつくられた人も融け失せてしまうので、口外するわけには参らぬ。
じっと聞いていた卿は、首を少し傾けながらこう仰った。
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