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2008年12月26日 (金)

タマゴとビスケットとコーラ 欲しかったなァ、あの時代

終戦後、おやじは体調を崩して入退院を繰り返していた。お袋は親戚の田舎から卵を分けてもらい、おやじに食べさせていた。

あの目玉焼きの匂いのいいこと。ほんの少し塩を落として小皿に載って出てくる。これはおやじだけのもので、私たちは見ているだけだった。おやじに体力をつけてもらうために、家族がじっと我慢していた。

おやじが食べ残した目玉焼きの白身の残りを、そっと口に入れる。なんとも嬉しかった。

そのおやじは昭和29年に亡くなった。

ビスケットも欲しかったなァ。親戚のおばさんが子沢山で、母子家庭になって、母親が一人奮闘しているので、子供たちのおみやげにそれがあった。もう口の中でトロトロになるまで飲み込まずにいた。一度にゴクンとできなかった。もったいなくて。

コーラというのはずいぶん前からあったらしいが、私が口にしたのは、就職した昭和36年である。給料がもらえるようになると、それを買って来て、妹たちに飲ませた。このころ天ぷらにも驚いたことがある。

名古屋の料理屋で食べる天ぷらは、飛び跳ねるようなコロモで、しかも天つゆで食べる。わが家の厚めにコロモを着けて、まるでドテラを着た芋で、ソースであった。

田舎者が街に出て、カルチャーショックを受けたみたいだ。

今は、毎日朝食でタマゴが出てくる。でもあのころの味がしない。濃厚さがない。それは当たり前に食べられなかったあの時代だから、すべてが美味しかったんだろうか。それに甘さに飢えていた時代だった。

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