御屠蘇って?
昨日おせちを頼んできた。おせちって「御節」と書くんだね。改めて調べてみたら、正月・五節句なので特別な料理とある。
五節句とは、
- 正月七日の人日(じんじつ)
- 三月三日の上巳(じょうし)
- 五月五日の端午
- 七月七日の七夕
- 九月九日の重陽をいう。
をいう。だから正月のみならず、五回の御節がある。何か得した気分になった。
私がおせちを買うのは、一宮の裁判所の南50mにある「渡辺惣菜店」である。ここは百貨店やスーパーなんかで買うあの独特な万人向きの甘みが嫌いで、敬遠していた。ところがここの惣菜を買っていて気が付いたが、家庭的な味を持っている。濃すぎず甘過ぎず、口当たりがとてもいい。一昨年からここで御節を買うようになった。
この時期店に出るのが、「鮒味噌」である。寒鮒の出るシーズンには必ず買いに行く。寒鮒を丸ごと一匹、赤味噌で骨が柔らかくなるまで煮込んである。
正月といえば、お屠蘇が付き物だ。ところがヘソの曲がったおじさんは、この漢字が気に入らない。「お屠蘇」の「屠」である。これを漢和辞典で調べると、
- 「打って切る意」と冒頭から飛び出てくる。
- さく。動物を裂いて肉をばらす。
- ほふる。人を殺す。牛馬などを殺す。攻め滅ぼす。
この漢字には、こんな熟語が並んでいる。
- 屠解(とかい)=動物を殺し、肉を裂く。
- 屠狗(とく)=犬を殺し、その肉を食用として売る。
- 屠沽(とこ)=犬や豚を殺し肉を売る。
- 屠宰(とさい)=家畜を殺し、料理する。割烹。
- 屠肆(とし)=犬や豚の肉を売る店。肉屋。「肆」は店の意。
- 屠所之羊(としょのひつじ)=屠殺場に引かれていく羊。命のあやうくなったもののたとえ。
- 屠焼(としょう)=人を殺し、家を焼く。
- 屠城(とじょう)=敵の城を破り城内の人民を殺す。
こんなのがまだ続く。ではなぜ祝い酒にこんな縁起でもない「屠」と使うのか。「屠蘇」の「蘇」を考えよう。
- しそ。
- よみがえる。生き返る。さめる。やすむ。困苦を逃れて休息する。
そこでやっと「屠蘇」をひもとくと、もと中国伝来の薬。肉桂(にっけい)・山椒・白朮(はくじゅつ)・桔梗・防風・赤大豆などを調合して酒(多くは味醂を用いる)にひたしたもの。元旦に飲めば一年の邪気をはらい、寿命を延ばすという。
でもワシはまだ納得いかない。そこで廃品回収に出ていた『世界の酒』住江金之著を拾ってきたので調べる。
ーーー暮れになると「屠蘇散」なるものがでる。そのうたい文句は「お屠蘇には、白朮 山椒 桔梗 肉桂皮 防風 が配合されています。大晦日から清酒に浸したお屠蘇を、元日の朝、年少者から飲み回し、1年間の無病息災、不老長寿を願う風習があります。各生薬成分の効果をまとめますと、屠蘇散(お屠蘇のティーバックの中身)には胃腸の働きを整え、のどや気管支を保護する効能があることがわかります。お屠蘇を飲むことで風邪の予防になります。先人の知恵を、ふだんの健康管理にいかしていくことができたら、いいですね」とある。ーーー
現在でも、一袋157円で、通信販売されている。
中国伝来のものであるが、今は中国でも行われていない。発明者は後漢(1650年前)の名医華陀(かだ)であ る。この薬で死者もよみがえるのでこの名前がつけられたという。日本では嵯峨天皇の弘人2年(810年)、宮中で始めて用いられたという。この屠蘇処方はいろいろある。本草網目によれば、
- 山椒=山椒の実で芳香がある。健胃剤で強壮剤でもあり、主成分はサンショールである。
- 桔梗=桔梗の根でサポニンを含み、痰(たん)、咳にきく。また胸脇痛、下痢によい。
- 防風=防風の根で寝汗の薬であり、かぜ引きにきき、痛風のよい。
- 赤朮(せきじゅつ)=強壮剤である。かぜ引きにきき、解熱の効がある。また汗が出ないのを出す効、汗の出すぎをとめる効もある。
- 大黄=大黄というタデ科の植物の根で、少量では、健胃剤であるが、多く使うと下痢になる。主成分はエモジン・クリソファン酸などの配糖体である。
- 桂心=肉桂(にっけい=にっき)ともいう。肉桂の木の皮で、芳香性シンナミック・アルデヒトが主成分である。このごろ、飲料とか菓子類などにも入っている。健胃の効もある。
- ばっ葜(ばっかつ)=かぜ引きの薬となり、利尿剤となる。
- 烏頭(うず=とりかぶと)=中国古来の作り方では、猛毒のトリカブトを、一夜井戸に吊るしておき、その水を飲めば一年病気をしない。その五これを酒に浸すので、トリカブトの毒が少ない。日本のようにいきなり酒に浸すとあぶない。
天明3年、加藤佐渡守の料理人が古法の屠蘇を造り、同役2人と飲み死んでいる。幕末のころ銚子に流れ込んできた漢方医が、古法の屠蘇と称して配ったのを飲んで死亡したのが数か所あったという。屠蘇を馬鹿にしてはいけない。
今はそんなものを使わず、この著者が書いている方法は、山椒の実と肉桂を等分にして、これにミカンの皮を適量加えている。市販の屠蘇散よりよほど香りがいい。山椒と肉桂は薬屋に売っているという。
今年は本格的に「屠蘇」を味わうか。
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