西洋料理の日本人的マナー
以前トヨタ系の販売店に勤め始めたころである。上司と近くのレストランに入った。
早くにオヤジを亡くしたので、粗食で育った。この日カツライスなるものを注文した。カツなんて就職するまで、家では食べたことがない。
卒業する前に、名古屋のホテルでテーブルマナーの教育を受けるのが、就職する者の義務であった。ここでも確かフォークとナイフの使い方を教えられた。合点がいかないのは、フォークの方である。なぜ無理やり乗せにくい湾曲した背中に乗せるのかということだ。
私は洋画が好きで、その画面の中の食事風景で、フォークの使い方が間違っていることを知った。腹の方ですくい上げて食べているではないか。それは確か理にかなっている、と妙に納得した記憶がある。
以来私は堂々と腹の方ですくって食べていた。これを見た上司が、「君は、テーブルマナーを知らないのか」という。そこですかさず、「日本のフォークの使い方が間違っています。洋画に出てくる食事風景を一度ご覧なって下さい。腹ですくって食べています。この方が合理的なんです」と、私を小馬鹿にした目で見ている上司に向かってに言い放った。どうもそれ以来、やりにくい部下として評価されたような気がする。
もう一つ、スパゲッティーでフォークでクルクル回して食べますね。最近これにスプーンが出てくる。これをどうやったら使いこなせるのか、今もって四苦八苦している。これって本場ではどう使っているのだろう。それを最近読んだ『どうせ今夜も波の上』椎名誠著に書いてあった。
ーーイタリア人に聞いてみると、そんな食べ方はしない。だいいち、そうするとスプーンの上にフォークにの先端が当たってキコキコと金属音がしていやでしょうーー
という回答だ。私の友人のホテルマンが、やはりアメリカに修行に行っていたとき、「そんな食べ方はしないよ」と言っていた。これって日本人が作り出した日本人的マナーだ。
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