戦後間もない、町内の備忘録に取りつかれている その一
今年は組長になった。「オノレ~!ワイを誰やと思ってんねん」と、関西弁で脅しかけるお兄さんと違うよ。町内のね、それも30軒の小さな町内の内、10軒しかいない第2組の組長だ。
持ち回りの書類の中に、備忘録を見つけた。昭和29年に亡くなったオヤジの直筆に会えるかも。読んでみると、戦後間もない昭和22年に、第二組の組織の発足がバラックが立ち並んだ民家の中で始まった。どこの家の周りも、塀というものがなく、どこからも出入りができるがら透きの敷地に、かろうじて隙間風を防ぐかのような家々が、背中合わせである。
初めての、第二組という組織を作るために集まった町民は、ほとんど戦争体験をした30前後の男らであった。私の家族は昭和21年にここに住み込んだ。まだ新入町内会員である。ここはほとんどが戦前から住んでいる人たちばかりだ。
狭い家に中は、男らが膝を突き合わせた。
今回の集まりは、戦後の治安を守ることとか、配給制度が順当に穏便にいくようにするという、行政の指導もあったのかは、この備忘録にはない。戦前から町内より小さい組の組織、それより細かい向こう3軒両隣が重視された時代である。
会議の記録には、全てが記録されているわけではない。記録によると、1ページの冒頭には、「目出度甫」と書かれてある。冒頭のこの文字から判読が始まった。
もうここから古文書を読んでいる感覚になってきた。そこでテーブルには、『漢和辞典』『くずし文用例辞典』『広辞苑』『電子辞書』『冠婚葬祭辞典』を持ち込んで、山積み状態になった。時々挑戦している古文書を読むときの雰囲気になってきた。解読できた時のドキドキ感がいい。
電子辞書で、この「甫」が読めない。初めて見る漢字だ。そこで漢字を分解して、読めるところをどんどん入力する。まず「うら」と読んだら外れていた。では「用」と入れて、画数「7」を入れたらなんと、ピッタシ出てきた。なんと「はじめ」と読むんだそうだ。
「大変目出度い甫である」と、喜んでいるのでいる。粋な書きはじめだ。
今回から第4回まで連載いたします。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。


コメント