カレーうどんの悩み
スーパーの中の食堂に入ったら、ネギトロを食べようと思っていたら、こんなメニューにぶつかった。ウン?「カツカレーうどん」って?・・・・何だ?
つい「カツカレーうどん・・・・下さい」とのたまってしまった。本心はネギトロを食べたかったのに、横目ににらんで、心の中で「ネギトロよ許せ、次こそ、次こそ君だよ」と私は心の中で水原弘の《次こそ我命》という歌を念仏のように唱えた。
それにしてもカツカレーうどんって何だァ? カツ・カレーうどんだと、カツライスにカレーうどんが付いてくる。それともカツカレー・うどんなんだろうか。これならカレーライスにカツが乗っかったやつにうどんと分かる。考え込んでいると、注文出来上がりベルがけたましく デジジジジーと鳴った。
配膳を見て猫だましに合ったような、舞の海に四の字がためをされたような、ようするに全く想像を覆されてしまい、まるで還暦を迎えた輪島のカエル跳びで一発食らったようにクラクラした。
それはカツ・カレーうどんでもカツカレー・うどんでもなくカツカレーうどんであった。(そりゃそうだが・・・・)
ようするにそのまんまで、うどんの上にカツを乗せ、カレーの具をたっぷりかけてある。その脇に白いごはんが添えてあるシロモノだった。私はただただ、う~んと唸るだけであった。
カレーうどん、これだけで独立した商品である。これにカツを添えるだけで変人である。まるで私が芸者を連れて歩いているか、和服に長靴をはいているようではないか。それをだよ、上に乗っけて具までかけちゃう。こんなんありかァ?
この会社の、商品開発部の面々の頭ン中のぞいてみたい気になる。社員の服装なんかは、ムギワラ帽子に蝶ネクタイとか、背広の下にジャージーはいて足は足袋じゃなかろうなァ。とにかく個性的で独創的でアイディアたっぷりで楽しくなる。
さて悩んでいるとうどんがのびちゃうから、まずカツを一切れ食べる。その空き地からうどんを2本ほど引っ張り上げようとしたら、それがなかなか上がらん。いつもよりカツが乗っかっている分だけパスカル度が高い。だから、なかなか口ン中にはいってくれない。
この店は何か企んでいる。ひょっとして全部コマ結びにしてあるかもしれない。サルベージ作業を一時中断してうどんの中にハシをコネコネと入れ、さぐりを入れる。さぐったついでに、中ほどからうどんを引っ張り上げる。カレー汁を全身にねっとりとまとって「うひょひょっ」と出てきたうどんを、力任せに引き上げてやった。
うどんも「何のこれきしの力で・・・・ウググ・・・・」と腰に力を入れた。
「ウン? ここのうどんは腰がある・・・・ウググ・・・・」
力を入れようがしょせんはうどん、ウググーッと伸びたがやがて諦めたか、途中からプツンと切れた。ところが切れたわいいが、このカレーうどんの厄介なのはネチョネチョヌルヌル、トロトロ汁を身にまとっているから、引き上げの力の分だけうどんの尻っぺたが跳ね上がり、メガネにネチョッと汁を付けた。
「わ~っ!」と1人叫び声を上げた。普段、おとなしいと思っていたはずのうどんの反撃に、のけ反ってしまった。
「クッソーッ」
周りに気付かれないよう、自然体でメガネをふく。今度は上の重量物を取り除いて、パスカル度を下げてやる。そして、また再挑戦する。どうもうどんというのは、ラーメンやそばと違い、ず太い分だけ反抗も抵抗も鋭い。
一昔前のデモ隊で、機動隊からゴボウ抜きされないように、腕組み、足がらみ、羽交い締めしているに似ている。
もう一度ハシをうどんの中にコネコネと入れて、ひたすらにほぐす作業をする。摘まんでは引き上げ、底をつついてはまたこねまわし、摘まんではコネコネを繰り返した。 そして、いざうどんをすすり込むと、最後のところでプチンとはね、口の回りはカレーまみれになってしまった。(ムッカーッ!)
なんでカレーうどんってこんなにイジケタ性格なんだ。なぜこんなに跳ねっ返りな子になっちゃったんだ。うどんという和製の商品に、カレーという印製(陰性と違うよ、印度製のこと)、カツという洋製(陽性と違うよ、チョットくどいか)が一家を成すと、中近東の紛争のようにドンパチも凄味が出るのかもしれないなァ。
和製はこの際、腰砕けの日本人そのまんま、ぷっつんぷっつん切れる二八そばにした方が八方丸く収まるかもしれん。この店に、カツカレー二八プッチンそばを提案しよう。
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