ホークとナイフに往生した
久しぶりに遠出をした帰りに、市内のもう少なくなった大衆食堂に行きたくなった。今どき珍しい絶滅危惧種の、2階までの配膳を運ぶエレベーターが稼働している。何を食べようかなァ、刺身と野菜の煮物、アジかイワシの煮物、一度クジラを食べてみたい。壁にはいたるところにメニューが貼り付けてある。いつも気になっているのがクジラだ。こう思いながら店に行くとシャッターが下りている。「ケッ!休みか」と舌打ちしながら、昨夜見た夢を思い出した。
昨夜、どういう訳か、「オムライス」と「オムレツ」はどう違うのか、ということが突然頭をよぎった。いつもこういう時のためにメモを用意してある。朝起きるとその書き込みを見る。ここで今日は昼食をオムライスと決めた。一宮では私が聞き及んでいるうまい店が3軒ある。そこへ向かおうと思ったら、なんと目の前の小さな店の黒板に、今日のメニューがチョークで書いてある。そこにオムライスが今日のメニューで出ていた。新発見!「洋食メルシー」である。あることは知っていたから、新発見とは言い難い。
オムライスが気になり、一旦通り過ぎたがすぐにバックした。迷わず店に入る。昔ここは喫茶店だった。店主に聞くと、昭和11年にレストランスワローで営業を始め、途中から喫茶店に変わった。近年、まるで「おっさま=僧侶」のように頭を丸めたイケメンの店主が、新しく洋食屋を始めたという。その名が洋食メルシーである。
私が会社勤めし始めた昭和36年ごろ、確か喫茶店だったと思った。何度か入った記憶がある。勤め始めて自分で自由に使える金を手にしたからだ。我が家ではコーヒーなんて皆無の生活をしていた。なんとなく文明開花に出合った気がしたものだ。
店内はカウンターに5~6人、テーブルには、二人掛けと四人掛けがあるこじんまりとした店である。すでに3人の女性が食事を終りかけていた。店内にはシャンソンが流れている。
ビールを頼んだのでその前菜のなのか突出しなのだろうか、小鉢にケーキの様な物が出てきた。道具は何を使うのか不明なので、手づかみで食べた。次にポタージュとサラダが出てきた。ポタージュはそのまま飲むのではないので、スプーンを探した。サラダはナイフとフォークを出した。やけの道具が出てくるなァというより、なにをどう使っていいのか分からず往生した行動なんである。
いいよオムライスが出てきた。ここでまた困った。通常オムライスはスプーンで食べている。これはわが家だけか?そこでまた道具箱をガチャガチャ探したら、平ぺったいスプーン状の道具が出てきた。これってアイスクリームを食べるときに使うのか(マァ、いいや)。これとナイフで両刀使いでかぶりついた。
しまいに手づかみで食べたろうしゃんと思うほど悩んでしまった。しかも皿をガチャガチャさせるというマナー違反をやらかすという、情けない昼食となった。高校卒業するときに名古屋のホテルでテーブルマナーを習った。以来自己流を通している。昭和36年当時は、フォークの背中にご飯を乗せていた。
シャンソンを聞きながら、若い二人が愛をささやいてもいい環境だ。雑誌もない新聞もないマンガ本もないから、実に落ち着いたムードがある小部屋だ。こんないい場所で、皿をガチャガチャさせてムードを壊してはいけい。
でもこれだけは得意なんだ。ビールは非常に上手に飲めた。この分で行くと本日のメニューの中でハンバーグならなんとかこなせたかも。
マウンテンバイクで52kmも走ってひと汗かいた後に、食事で二汗も三汗もかいた。ひと汗以降は冷汗だったが。
落ち着いた気分にさせていただき、「メルシーボク=どうもありがとうございました」ごちそうさまでした。
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コメント
ありがとうございました。また色々語りましょう。
投稿: メルシー | 2013年1月19日 (土) 00時04分