お宝掛け軸が出てきた
先日妙興寺という寺の手水舎で、時ならぬ掛け軸の話に熱中した。
ここの仏殿の管理人というのは、歴代の老師との交際が深く、寺から老師たちの掛け軸を桐の箱入りで拝領しているという。なんとも羨ましい話を聞いた。
そこへ偶然現れたのは、朝ラジオ体操で顔を見るSさんと友人の2人であった。
このSさんというのは、昔勤めていたのが掛け軸の表装や美術品の販売をしてみえたという。
ふと私の母親が、妙興寺の塔頭の耕雲院から、妙興寺の先代の老師、狭間宗義さんから掛け軸になる書をいただいていたことを思い出した。そこで押し入れの上の天袋を探したらそれらしきものが出てきた。早速管理人に翌日見せると、本物だという。
管理人も持っているという。先日それを「1本」で売ってくれという人が来たという。一本とはいくらと聞くと「100万だ」という。ならワシのやつを50万で売ってやるというと、「100円」だという。こりゃ嘘っぽい管理人の話だ。
画仙紙の崩し文字は、私にはなかなか読めず、くずし字用例辞典片手に「古松渓仰藤」としか読めなかった。Sさんに読ませると、いとも簡単に「古松談般若」と読み解いた。「古松談般若」と書いてあるらしいが、その意味を聞かなかったので、調べたら下記のごとくなかなかの味のある言葉であった。
いい機会だから、これを表装しようと思った。Sさんが言うには、卸値でやって上げるという。持つものは友達だ。
古松談般若とはいかなる言葉か。その説明を二つここに掲載する。
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「古松般若を談ず」で松樹は千年の翠(みどり)を示して教えを垂れている。
だが、世の人々は自然天然の奏でる般若の説法に耳を傾けようとしない。
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中国 宋代記の『人天眼目』より「幽鳥弄真如」 (ゆうちょうしんにょをろうす)
中国における禅宗五派の真髄をまとめた中に以下の句が出てきます。
古松談般若 古松般若を談じ……古木の松が仏法念仏を語り
幽鳥弄真如 幽鳥真如を弄す……山奥にいる鳥の声が真理を表す
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古松談般若と幽鳥弄真如がセットになっている言葉だった。その解説は、
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何気ない身の周りの風景・様子に目を凝らし、耳を澄ませば大切なことに気付くことができる。
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そうなると、片割れ「幽鳥弄真如」を書いたものを見つけたくなる。この説明を後世のために、桐箱に入れておくことにしよう。
戦後すぐの昭和29年にオヤジが病死した。その後、苦労して5人の子供を育てたお袋の、わずかな遺品が日の目を見る。
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